2011 年 6 月 30 日午後、東京・東銀座の時事通信ホールにて、Painter 12 の新製品発表会が開催されました。(プレスリリースのページは こちら。)
まず堺社長からの「あいさつ」。東日本大震災の被災者のかたへの見舞いの言葉から始まりました。震災により IT 業界にもダメージがあったが、コーレルはカナダのオタワの他にも、カリフォルニアのマウンテン・ビューや台湾にも開発拠点があるグローバルな会社であることもあって、あちこちから日本に向けての激励をいただいた、Painter 12 が IT 業界の活気をに寄与できることを願う、という内容でした。また、Painter 12 英語版のローンチに際しては Seeing Is Believing Tour と題して Android Jones 氏により世界各地でイベントが開催されたことも紹介。それぞれの場所の建造物に作業画面を投影しながら描いてゆくというイベントで、その映像はオンラインでも見られます(例 ― Lightning in a Bottle、Video: Los Angeles)。
Painter 12 はすでに英語版が海外で高い評価を得ている、として、次のような海外レビューも紹介されました。
- PC Mag Corel Painter 12 Review ― デジタル・イメージング部門の Editor’s Choice に選出。機能を覚えるのに時間がかかるし値段も安くはないが、Painter 12 は使っていてとても楽しく、快適(dream to use)と評価。(評価 4.5 / 5)
- CNET on Corel Painter ― ハイエンドのグラフィックソフトでは、製品への大幅な変更は当たりはずれがあるが、Corel Painter 12 の場合は大当たり。パフォーマンスの向上と新搭載の機能はアーティストにはヨダレもの。(評価 5 / 5)
- CreativePro: Corel&rsauo;s Painter 12 Is a Stunning Update ― これまでもアーティストにとってとても役立つ道具だった Painter だが、今回はアナログ画材の発想に縛られない機能(万華鏡ペイントなど)も追加、インタフェースもさらに Adobe ユーザーにわかりやすくなり、すばらしいバージョンになった。
続いてコーレルジャパン、マーケティング部の吉岡氏による製品紹介。これはすでに Painter 12(英語版)速報 でお伝えしたことと重なりますが、最初に「今回は特に パフォーマンスの向上 に力を入れた、という点から始まりました。

上は会場のスクリーンで紹介された、今回のバージョンで目標とした改善点です。(画質のよくないデジタルカメラ画像から切り出して、斜めになっていたのを長方形に変形したので、読みにくくなっています。) 改善点のうち、画面表示の画質についての要望は「拡大時」ではなく通常の作業時にズームアウト(縮小表示)したときに滑らかなアンチエイリアスがかかるようにしてほしい、というのが正しいと思いますが、Painter 12 ではこの点、とてもよくなったのも確かです。
パフォーマンス向上について、サイズの大きいアクリルブラシで Painter 11 と比較する実演で紹介、さらに、大きいファイルのサイズの扱いが楽になったことの一端として、キャンバスの回転表示でキャンバスをつかんで「ぐるぐる」動かすのは Painter 11 ではひっかかりながらカックンカックンと表示されるが、Painter 12 だと滑らかにぐるぐる回せる、ということも実演で印象づけていました。
万華鏡ペイントについても、基本的なパフォーマンスの向上なくしては実現できなかった機能である、という説明があり、これは「なるほど」と思いました。
安倍吉俊氏によるデモ
今回、会場での実際の Painter 作業デモを行ったのは、「灰羽連盟」などで知られる安部吉俊さん(AB’s HOMEPAGE)です。鉛筆で描いた線画を取り込んだものに彩色する作業を実際にその場でしばらく行ったうえ、通常どのように仕上げまで持っていくのか、について同じ線画から少し色違いで作成した作品で紹介。この完成作品は PIXIV で展示、制作過程のムービー も公開されています。
発表会会場で大まかに着色を終わった段階の顔アップが下の画面です。

作業は司会の飯田りえ さんの質問に安部さんが答える形で、会話しながらすすめられました。そのなかで出た話題から箇条書きで紹介します。
- 安部さんの Painter 歴は 1993 年から。Painter 2 か 3 であったと思う。だから長さにすると 18 年くらい。プロになってからは基本的に Painter で塗っている。
- 線画に鉛筆を使うのは、慣れていて細かいニュアンスが出しやすいから。マンガについては線画からデジタル。
- 使用するブラシの数は少ない。Painter 6 まで「水彩」、それ以降は「ティント」の標準丸筆をカスタマイズしたもの。線画の上に新規レイヤーを作成、合成モードを「乗算」にして塗り始める。
- 一枚の絵にかける時間は、背景がフラットな(今回のような)もので 1 日か 2 日、背景が込み入っていると構図で悩んだりすることも含めて一週間。
- 色塗りは早くて 4、5 時間、遅くて 20 時間。色塗りは基本的に「一息で」やるので、20 時間ぶっつづけ、ということもある。
- 下絵は時間のかかりかたに差がある。この絵については、半日(数時間)くらい。
- 絵を描き始めたのは高校卒業後、大学に行かずにいたとき、知人の知人でスピリッツで新人賞をとった人のアシスタントをやる話が来たのがきっかけ。自分がアシスタントとして役に立たないとわかり(背景に風景などの描き込みを指示されてもできなかった)、絵の勉強をしようと思って美術系の予備校に行ってみたら面白かった。
- 美術系の予備校に行っているうちに「大学を受けるか」と言われて受けてみたら東京芸大に受かった(受験は鉛筆デッサンと水彩だった)。
- 最初は木炭デッサンのコースをやって、鼻の穴まで真っ黒になるのに閉口した。上の学年に行くと油絵と日本画にわかれるが、日本画で使うのは鉛筆と岩絵具で、鉛筆が好きなので日本画のほうに進んだ。
- 安部さんの少し上くらいの世代から、「絵画」と「マンガやイラスト」の垣根が取れ始めた。安部さんの下くらいからマンガを描く人がふえた。イラストと絵画が分かれていたのを「つないだ」パイオニアに属するのかもしれない。
- 絵では「既存の分類にはいってしまわないもの」をだいじにしたい。
安部氏は現在、ガンガン ONLINE で リューシカ・リューシカ を連載中。最新の回が無料で読めます。
まとめ・記事紹介
発表会の最後はコーレルジャパンのマーケティング部広報担当の野中さんから、Painter を使っているアーティスト紹介として、コンセプト・アーティストとして数多くの有名映画作品(近日公開の「Super 8」ふくむ)に参加している Ryan Church 氏の作品、マクロスシリーズで有名な美樹本晴彦氏によるガンダムの登場人物の集合絵が紹介されました。
会場のようすはコーレルジャパンが Facebook の アルバム で公開しています。
Painter 12 日本語版 はこの発表会開催と同時にダウンロード販売が開始となりました。価格は通常版が税込 62790 円、Painter X 以降からのアップグレードが税込 31,290 円となっています。(2011 年 8 月 5 日のパッケージ版の発売まで、ダウンロード版が 5% の割引になります。) パッケージ版にはこれまでのように特別優待版もあり、通常版から 10,000 円の割引ですが、古いバージョンの Painter や Photoshop のほかに SAI や IllustStudio を持っているかたも対象になるので、お見逃しなく。
パッケージ版の内容は、アプリケーション本体のほかに、追加ライブラリ(これはサイトからすでにダウンロード可能)、印刷物のスタートアップガイドなど。印刷物のユーザーガイド(マニュアル)は附属しないもようです。
Painter 20 周年記念の缶入りバージョンについても、日本でも発売予定とのことです。
この発表について、次のような紹介記事があります。
- Painterが本気出した:描画のレスポンスを高速化――「Painter 12」発表会 (ITmedia +D PC USER)
- コーレル、64bitに対応した「Corel Painter 12」を発売 (ASCII.jp デジタル)
- コーレル、最新デジタルペインティングソフト「Corel Painter 12」発表 (マイコミジャーナル)
機能の詳細は ユーザーガイド(日本語版)(PDF ファイル)そのものが配布されてますので、(説明がわかりやすいとは言えない部分もありますが)、じっくり確認できます。また 機能比較表 もあります。
公式サイトの 機能概要 のタブを開くと、機能一覧とそれぞれのムービー(英語のムービーのテキストと音声を日本語化したものなので、画面は Painter 12 英語版)による説明があります。
公式サイトの「無料体験版」のタブを開いたページから試用版がダウンロードでき、機能制限なしで 30 日間使えます。
英語版で体験版を期限まで使用したパソコンでは、日本語版を入れてもすでに使用期限終了になります。英語版と日本語版はアプリケーション本体は同じです。
新しい Product Manager の Andy Church さんに確認したところ、現在 SP1 に向けてすでに準備中とのことです。SP1 が夏、秋には中国語版(繁体字版・簡体字版)と韓国語版ほか、各国語版が発売になる予定です。
Painter 12 ローンチイベントにかかわった Android Jones さんの万華鏡ペイントによる スクリーンセーバー も配布されています。その画面のムービーは こちら。
発表会のあとで他の Painter ユーザーさんと話をする機会がありましたが、複数ユーザーのわりと一致した意見として、「新機能の紹介を優先することで、以前からある Painter 独特の機能紹介がないために、使ったことがない人に魅力が伝わりにくいのではないか」という懸念があります。コーレルジャパンにはそういった面の強化もお願いする方向で働きかけていくとともに、このサイトでも「独特の機能」にもっと力を入れて紹介していかなければ、と思いました。
(2011/07/02)